日本は資源がない国です。この日本が世界で豊かな生活を維持するには、技術しかありません。当社は、東南アジアでのバイオマス事業に取り組み、技術供与をしています。
我が国は、エネルギー及び化成製品原材料の源の中心となっている化石燃料の大部分を海外からの輸入に頼っているという根本的な脆弱性を抱えており、海外の状況の変化に大きな影響を受けやすい構造を有しています。さらに、国際的な地政学的構造の大きな変化に直面する中で、我が国のエネルギー安全保障を巡る環境は、厳しさを増しています。
その解決策の一つが、バイオマスの活用です。バイオマスは化石燃料と比べて豊富な賦存量があり、どの国にでも存在するメリットがあるが、デメリットとして、化石燃料と異なりエネルギー密度が低いこと、固体であるためハンドリング性が低いことなどがあげられます。そのため、バイオマスを液化し、エネルギー密度を向上させハンドリング性を向上させる研究開発が各国で進められています。
また、再生可能なエネルギー資源であるバイオマスは、エネルギーだけではなく、石油の代わりに様々な化成品の原料となり得ます。現在、バイオマスは燃料、電力、化成品・中間体等を作り出すバイオリファイナリが注目されています。様々なバイオマスから、生物的または化学的な変換技術を利用し、環境に調和しながら持続的に、エネルギー、化成品、材料、食品、医薬等の製造を行っています。バイオリファイナリが成り立つには、高付加価値化成品の製造が欠かせません。
バイオマスは多種多様であり、その組成成分も多様であるが、最も豊富で、ポテンシャルが高いのは、セルロース・ヘミセルロースを含むリグノセルロース系バイオマスです。
現在セルロース類の加水分解・糖化後得られた単糖類を固体触媒の存在下水素化する方法より生分解ポリマーの単体であるフルフラールやヒドロキシメチルフルフラール(HMF)を製造する方法が報告されています。また、固体触媒を用いて、セルロースの加水分解の副生成物として有用な含酸素化合物を回収する方法も報告されています。しかし、これらの方法のいずれも効率が低く、生産コストが高いです。また、生成したバイオマテリアルに含酸素化合物が多く、不安定で、貯蔵性が非常に悪いのが現状です。これらの生成物を化成品等の原料として利用には、水素化処理等の後処理が欠かせません。
当社では、固体酸触媒を用い、温和な条件下で、草木質系バイオマスを分解し、低分子化させると同時に、ワンステップで、低コスト・低エネルギー消費型草木質系バイオマスから直接高付加価値の含酸素化合物を製造する各種触媒の開発を行っております。
公開資料
論文発表
掲載日 | 内容 |
2017年5月 | One-pot production of 5-hydroxymethylfurfural from cellulose using solid acid catalysts Fuel Processing Technology Volume 159, May 2017, Pages 280–286 Hisakazu Shirai,Saki Ikeda,Eika W. Qian |
2014年6月 | Liquefaction of Lignocellulosic Biomass in Protonic Solvents 日本エネルギー学会誌 Vol. 93 (2014) No. 6 p. 548-554 Hisakazu SHIRAI, Hirokazu ARIGA, Eika Weihua QIAN |
2013年9月 | Effects of Si/Al ratio and Pt loading on Pt/SAPO-11 catalysts in hydroconversion of Jatropha oil Applied Catalysis A: General, Volume 466, 10 September 2013, Pages 105-115 Ning Chen, Shaofeng Gong, Hisakazu Shirai, Toshitaka Watanabe, Eika W. Qian |
2000年10月 | Reactions of Tetralin with Tritiated Molecular Hydrogen on Pt/Al2O3, Pd/Al2O3, and Pt−Pd/Al2O3 Catalysts Energy Fuels, 2000, 14 (6), pp 1205–1211 Weihua Qian, Hisakazu Shirai, Masahiro Ifuku, Atsushi Ishihara, and Toshiaki Kabe |
学会発表
発表日 | 内容 |
2014年3月 | 水素存在下での金属担持固体酸触媒によるセルロース水熱液化反応機構の解明 ○小川 歩・池田 咲・白井 久一・冨永 弘之・銭 衛華 日本化学会第94春季年会 |
2013年11月 | セルロースから5-ヒドロキシメチルフルフラール転換反応における固体酸触媒の影響 ○池田 咲・白井 久一・小川 歩・銭 衛華 第43回石油・石油化学討論会 北九州大会1日目 |
2013年3月 | 木質系バイオマスの固体酸水熱糖化 ○Kaisaier Kelimu ・ 白井 久一 ・銭 衛華 化学工学会第78年会 |
2012年8月 | 水素の存在下におけるセルロース系バイオマスの液化 ○白井 久一、池田 咲、銭 衛華 第21回日本エネルギー学会大会 |
1998年11月 | トリチウムトレーサー法を用いた水素化触媒の反応性の評価 ○白井 久一・井福 正宏・銭 衛華・石原 篤・加部 利明 (第28回石油学会) 創立40周年記念仙台大会 |